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「ルポ 保育崩壊」 [現代社会]

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  岩波新書の一冊。2015年4月刊。
  著者は、フリージャーナリストの小林美希さん。

  保育の現場の厳しい状況を訴える。

1 保育所がまるで足りない。
(1)「専業主婦世帯:共働き世帯」の比率は、1980年では「64:36」と専業主婦の方が多かったが、2013年には「41:59」と逆転して、共働き世代の方が多くなっている。この結果、保育所の需要が増大している。
   
(2)未就学児の育児をしている就業者で、25~44歳の女性は310万人いる。一方、保育所利用児童数は226万人。待機児童数は数万人とされているが、それは表面的な数字で、実際にはもっと多い。

2 保育の現場は崩壊しつつある。
(1)待機児童が社会問題となってきていることから、国は待機児童解消に向けて、以下のような背策を実施している。
    ・小規模保育施設の新設
    ・認定こども園制度
    ・民間企業の参入促進

(2)こうしたなか、保育の現場の崩壊が進行している。こうした施策により、なぜ保育の質が低下するのだろうか。また、なぜ多くの保育士が疲弊し、辞めていくのだろうか。

(3)その根本的な原因は、この国が保育についてきちんと予算を投じていないことにある。
   保育に対する予算は2015年度で、国と地方合わせて4,844億円であるが、この金額が不十分であることは、現場の状況を見れば明らかだ。
   国は、一定の保育水準を維持することができるような予算をつけるべきだ。

(4)保育所の数ばかりが注目されてきたが、その背後で起こっている保育の質について、もっと目を向けるべきだ。

3 保育所のブラック企業化
(1)保育所の運営経費では、本来は人件費が8割ほど占めるため、剰余を生み出そうとすれば人件費に手をつけるしかない。すると保育士の人数は最低基準ぎりぎりとなり、かつ非正規雇用化が進む。かつ、残業代も未払いになり、「ブラック企業」と化してしまう。

(2)保育の現場では、急激に保育士の非正規雇用化、定員の弾力化、労働時間の長時間化が進み、一人当たりの負担が増しているのが実情だ。

(3)母親の労働時間の長期化が影響して、保育所で子供を預かる時間帯の長期化も進行しており、保育士への負担が増している。
 
  * 1998年と2012年の比較では・・
     預かる時間  11~12時間  26.5%から63.4%へ
            12時間超    2.1%から12.2%へ

(4)北海道労働局が2014年に公表した資料によると、保育施設における法令違反の上位3項目は・・・
 ① 法定労働時間に関する事項
 ② 労働条件の明示に関する事項
 ③ 時間外労働等に関する割増賃金に関する事項

  労働時間や、残業代に関して、問題が多い。

4 長く勤められない環境
(1)長年勤めてきた、経験豊富な中高年の保育士は、コストが余計にかかるため好まれない。このため、保育士は20~30代が6割を占める若者の職場となっている。極端に中堅層が少ない状態になっている。

(2)保育士は、いろいろな先輩と後輩がいる多様な保育感がある中で成長していくことが重要だ。そのためにも、長く勤められる労働条件や労働環境がなければならない、

(3)希望に満ちて保育士になっても、労働環境の悪さで辞めるか、その環境にならされてしまい本来の保育ができなくなっていくか、いずれかになってしまっている。

5 保育士の低賃金
(1)自治労の2012年の調べでは、全国の保育士の52.9%が臨時・非常勤職員。雇い入れ時の時給は925円。月給についても、45.3%が14万円以上16万円未満。77%は昇給制度がない。

(2)横浜市内の保育所の調査では、株式会社の運営する保育所の保育士の賃金が特に悪い。

   2011年度の人件費率をみると・・ 
       社会福祉法人 70.7%
       株式会社   53.2%
       (最多の保育園を持つA社は42.2%)    
   大手の保育所チェーンほど、保育士に対する賃金を切り詰めているのが分かる。
   A社の常勤職員の年収は220~230万円。退職金未計上。 
 
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