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「インカ帝国の滅亡」 [海外文学]

14802825392951335795344.jpg  フランスの作家マルモンテルが1777年に発表した小説で、インカ帝国崩壊に至る過程を描写している。「インディアスの破壊についての簡潔な報告」を1552年に出版したスペイン人神父ラス・カサスやインカ帝国を征服したピサロを中心に史実に基づくフィクション。この小説を読んで参考になった点は・・・
1 16世紀のスペインはユダヤ人やムーア人(イスラム教徒)を異端審問により迫害、殺戮した。商業の中心を担ってたそれらの人々がいなくなったため、スペインの経済は疲弊し、富を国外に求めざるを得なくなった。新大陸の征服事業についてはラス・カサスなど残虐な行為をを非難する声はあったが、新大陸の莫大な富の魅力には勝てなかった。
2 1493年、ローマ教皇アレキサンデル六世がアメリカ新大陸を東西に分け、西をスペインに東をポルトガルに統治させる裁定を下した。その中で教皇は新大陸の住民を両国が征服し、キリスト教に改宗させる権限を与えた。この結果、住民がキリスト教に帰依しようとしない場合には、「いかなる殺戮が行われようと、どのような災いがもたらされようとそれらはすべて(住民側の)落ち度に起因するもの」との考えを正当化することになった。さらに、新大陸に赴いたスペイン人の多くは新大陸の住民(インディオ)は最初から神の敵であり、彼らを絶滅させることは神の御心にかなうことであるという狂信的な考えを持つに至った。

 当時のスペイン人はイスラム教徒をイベリア半島から駆逐し、キリスト教への信仰心は厚いものがあったが、支配層はキリスト教聖職者も含めその信仰はうわべだけのものに過ぎなかったということであろうか。あるいはキリスト教そのものに異教徒の迫害を許す構造的な欠陥があるのだろうか。

「ゆびさきの宇宙」 [現代社会]

1480075369020-2113398996.jpg  東大教授の福島智さんについて書かれた本。著者は朝日新聞の生井久美子さん。福島さんは幼児のころから病弱で9歳で失明、18歳で聴力も完全に失う。外部からの情報入手は点字などに頼ることになる。しかし、本を読むのが好きで努力を重ね都立大学の大学院を卒業、現在は東京大学先端科学技術研究センター教授。結婚もしている。
 福島さんは小さなころから必死につらい治療を甘受してきたにもかかわらず、次々と外部から閉ざされてゆく。その喪失感は想像を超えるものであったはず。「自分がこの世界から消えてしまったように感じた」という。自暴自棄になりかねないところ、福島さんは「自分の存在に意義があるのだろうか」と自分自身に問い、「苦悩には意味がある。そう仮定して生きていくしかない。使命があるとすれば、それを果たさねばならない」と考える。では障害者がなすべきことは何か。それは「生きることであり、より豊かに生きることであり、これらの営みを相互に支えあうこと」という。
 福島さんの研究対象は盲ろう者としての自分自身そして障害者全般だ。障害者というのは健常者と対比して「異常」なのだろうか、と問いかける。「人間に遺伝子や染色体レベルでの『異常』とよばれる突然変異がなければ人類の多様性や進化のプロセスは存在しただろうか」。「「人類にとってその本質的進歩を生み出すうえで・・・多くの人類とは異なる少数のものの存在、たとえば障害者の存在には意味があるように思う」という。
福島さんは、身体障害であろうが知的障害であろうが、障碍者は人間として健常者と同じレベルにあると言いたいのだろうと思う。障害者にしても健常者にしても、それぞれ個人の能力には差がある。しかし、人間としての価値に差はないということであろう。

「ルポ貧困女子」 [現代社会]

1479981888835-2113398996.jpg  本年9月に出された岩波新書の1冊。飯島裕子さんというノンフィクションライターが執筆。男女雇用機会均等や女性の活用といった掛け声をあざ笑うかのように、女性の雇用環境は二極分化が進み、一部では深刻さが増している状況を描いている。正社員になったとしてもブラック企業での過重労働やいじめにより精神疾患を患い短期間で辞めざるを得なくなる人が少なくない。パートや派遣といった非正規雇用に頼るにしても雇用は不安定で、収入も少ない。生きるために風俗や生活保護に頼らざるを得ない人々さえいるという。
 どうして若者にとり生きにくい社会にこの国はなってしまったのであろうか。この問題について考えてみると・・・
1 日本は確かに豊かな国であり、一部の人々、例えば大企業従業員、官公庁職員、企業経営者、医師、弁護士、会計士などの一部の専門職、資産家(一部の農家を含む)などは恵まれているが、その陰で貧困にあえぐ人も少なくない現実がある。この二極分化は拡大傾向にある。
2 その原因はどこにあるのであろうか。
(1)従来は正社員が担当していた仕事に必要な社員数が減少した。
  A 製造業の海外シフトにより製造業従事者が減少した。
  B コンピュータの利用拡大により事務職員の必要数が増えなかった。
(2)サービス産業においても、景気の低迷から価格破壊が進んだことや外国人労働者の流入などから、雇用の非正規化、低賃金化が進捗した。
3 対策はあるのだろうか。
(1)雇用ルールを無視して、若者を使い捨てにして生き残ろうとするブラック企業を国が責任をもって摘発すべきだ。残業規制も厳しくして、それで生き残れない企業は退場を促す。
(2)派遣労働の規制を強化し、正社員化を図る。
(3)研修名目の外国人労働者も含め最低賃金を大幅に引き上げる。
(4)学生がアルバイトに依存せずに学べるよう国の支援を強化する。
4 こうした施策が浸透すれば、サービス産業については価格引き上げが進むことになるが、やむをえない。若年労働者にしわ寄せがくる価格破壊は是正が必要である。

クリスマスの季節に人気となるおもちゃは? [インターネット情報]

14801125803831335795344.jpg  アメリカではブラック・フライデーというクリスマスのためのセールの期間が11月25日から始まりました。人気の商品が大きくディスカウントとなるこの季節に多くのアメリカ人がお店に殺到します。今年、人気となるおもちゃは何でしょうか。アメリカでは今年の10月に発売開始となった”HATCHMALS"というおもちゃが人気となりそうだと言われています。”HATCH"というのは孵化するという意味です。最初は卵の形をした容器ですが、孵化してその中からペンギンのような形をしたおもちゃが現れます。そのおもちゃを育てつつ、いろいろな遊びを楽しむことができるというものです。アメリカでの定価は59.99ドルですが、プレミアがつくほどの人気となっています。日本ではトミーが「うまれて!ウーモ」という商品名により販売しています。価格はトミーのサイトでは9,504円となっていますが、Amazonでは12,000円以上の価格がついています。品不足となっているのでしょうか。なお、この商品については賛否が分かれており、「育ちが早く遊び始めて数時間で飽きてしまう」という声もアメリカではあります。

「セールスマンの死」 [海外文学]

1479537143440-2113398996.jpg  米国の劇作家アーサー・ミラーが書いた戯曲。初演は1949年にニューヨークで。主人公は根っからのセールスマンで良い成績を挙げた時期もあったが、60歳を超え成績も落ち、長年勤めた会社を首になる。二人の男の子の仕事での成功を夢見てきたが、いずれの子も仕事はうまくゆかず親の過大な期待が重荷となり、結局、親子は対立する。主人公は人生の生きがいをすべて打ち砕かれ自殺してしまうという悲しい物語。葬儀に参列者が少ないことを夫人は嘆く。仕事をバリバリこなし子供たちと仲良く過ごしていた幸せな時期と、すべてがうまくいかなくなっている現在とが対照的。金銭面でも窮乏する様子が描かれているが、老後の貯えもなく刹那主義的な生きざまが垣間見える。人生の厳しい現実、生きてゆくことの難しさを教えてくれる。

「相模原事件とヘイトクライム」 [現代社会]

1479733857141-2113398996.jpg  世田谷区長の保坂展人さんの書いた本。相模原事件は、19人の知的障害者が殺害された事件。犯人は「障害者は社会のために抹殺されるべきだ」との手紙を衆議院議長に送っていた。著者は、障害者も一人の人間であり、障害者を抹殺すべきとの考えは許されないと言い、多数の人がこの問題に無関心であるという現状が問題だとしている。
  今回の犯人の残虐な行為は許されるべきものではないが、問題の根は深い。
1 日本では、知的障害者、精神障害者を社会から隔離して対処するという傾向が強く、一般の人々の中で暖かく見守るということにはなっていない。この点で欧米各国に比べ大きく遅れている(人口対比のベット数や平均入院期間が日本は異常に多い)。
2 施設のスタッフの充実や労働環境の改善などにもっと公的なお金を使うべきである。ボランティアなどによる一般社会との交流も必要である。スタッフが入所者を虐待するようなことをまずなくしていくことが大事。役所は無駄なお金の使い方ばかりで、こういう社会的弱者へ充分お金が回っていないのではないか。
3 親はだれでも子供が障害のないことを望む。出生前診断もさらに普及してゆくと思われる。しかし、いったん障害を持った子が生まれれば、社会全体で暖かく育てるという考えが浸透すべき。

「官賊と幕臣たち」 [日本史]

14796801509361335795344.jpg  著者は原田伊織氏。「列強の日本侵略を防いだ徳川テクノクラート」という副題がついている。この本の骨子は以下の通り。使っている言葉の割には目新しいことを書いていない。センセーショナルに書いてはいるが、深い歴史観があるわけでもない。
1 幕末期、幕府の優秀な幕臣が欧米列強と対等に交渉し、開国の道を開いた。
2 薩長が幕府を倒した要因は・・・
 A テロリズムを用い、京都を恐怖に陥れた。
 B 一部の公家を用い、天皇を担ぐことができた。
 C イギリスの軍事的な支援を得た。
 
 明治維新について考えるポイントとしては・・・
1 やり方に問題があったとしても戊辰戦争が日本近代化の幕を開けたことは間違いない。幕藩体制のままでは中央集権国家の確立や欧米をまねた制度の近代化は難しかった。どうしても幕藩体制の破壊が必要であった。
2 薩長が勝利した要因は、天皇を担いだこととイギリスの支援。幕府が倒された要因は、諸藩をコントロールする力が衰えていたことと軍備近代化に遅れを取ったこと。
3 日本が列強の植民地化を避けることができたのは、安定した社会体制と教育レベルの高い人々の存在であった。宗教やあへんといった社会を混乱させるための道具が入り込む余地を与えなかった。
4 日本ではその時々の支配者または破壊者により天皇を利用するということが続けられてきた。勤勉な国民や高い技術力を持つ割には日本の政治は遅れており、時に太平洋戦争のような大失敗を犯す要因になっている。

トランプと安倍首相の会談でのやり取りを想像してみると [現代社会]

14797627200391335795344.jpg  法政大学教授の山口二郎さんが東京新聞11月20日ののコラムに書いた、想像上のトランプと安倍首相のやりとりは大変面白い。その一部をご紹介すると・・・
トランプ 「選挙戦の期間中にヒラリーに会ったってことは、俺は絶対負けると思ってたんだろう」
安倍首相 「大変申し訳ありません。・・・本心を言えば、あの小うるさい女性よりも・・・あなたの方に私は共感を持っていました」
トランプ 「俺が反対しているTPPも・・・国会で可決したそうじゃないか。ケンカを売ってんのか」
安倍首相 「それはとんでもない誤解で。私はただ、アメリカの言いなりになることが我が国の利益になると国民に教えたいばかりに・・・」
トランプ 「それでこの超多忙な時に面会をねじ込んで何の用だ」
安倍首相 「私はただ、次期大統領に最初に面会した外国首脳になりたい一心で・・・」

「病短編小説集」 [海外文学]

1479274585986-911503934.jpg  平凡社ライブラリーの1冊。病気に関連する、欧米著名作家の短編小説を集めたもの。病は人々を突然襲い、打ちのめし、その人の人生に大きな影響を与える。いくつかをご紹介すると・・・
1 「サナトリウム」サマセット・モーム
   ともに入院している年配の男性と若い女性が意気投合し、結婚について医師に相談したところ、男性の余命は結婚せずに静かにしていれば2~3年、結婚すれば半年もたないと医師は告げた。しかし、二人は結婚した。人生の意味はその長さではなく、中身にあることをまさに示している。
2 「十九号室へ」ドリス・レッシング
   夫、4人の子供、大きな家、家政婦と、なに不自由のない恵まれた専業主婦のが鬱に陥り、ついに自殺する。そのような恵まれた環境で、神経をすり減らしてゆく様子を描く秀作。「自分の収入で暮らしてきた女性は結婚してからというもの、家の外の様々な楽しみやお金を夫に依存しているせいで、憤りや喪失感を心に隠し持つようになる」、「彼にとって彼女は遠くにいる存在で、しかも上手にあしらわなければならない誰かとなっていた。二人はどうにか友好的でいられる赤の他人のようにこの家で共に暮らしていた」。
3 「一時間の物語」ケイト・ショパン
  心臓病を患っている夫人が、出張中の主人が突然の事故で亡くなったとの知らせを受ける。最初に悲しみが、しかしその後で「『自由!身体も魂も自由よ!』と彼女はささやき、・・・これからどんな未来がやってくるのか空想を巡らせた」。しかし、夫は事故を免れ、家に戻ってきた。夫人はショックで亡くなった。医師は、夫人が死ぬほどうれしくて、と思ったのだが。

「欲望という名の電車」 [海外文学]

14795375202131335795344.jpg  米国の作家テネシー・ウィリアムズが書いた戯曲。1947年にニューヨークで初演。日本でも数多く上演されている。南部の農園主という上流階級に育った姉妹が、違った生き方をして行く様子を描く。妹は二部屋のみの古いアパートでがさつな夫と貧しくも着実な生活をする。一方、姉は若くして結婚するも失敗し、その後、男性遍歴を重ね、勤めていた学校の生徒にまで手を出す始末で、学校はもちろん住んでいた町からも追い出されることになった。姉は妹のアパートに転がり込むが、上流階級気取りの性格が災いして妹の夫と対立する。姉はアルコールや現実逃避の妄想にふけるようになり、ついには精神病院へ送られるという悲しい結末となる。没落する上流階級という出自が災いして、どうしても幸せをつかむことができない主人公であるが、なぜか心に訴えるものがある。人の弱さと現実の厳しさを鋭く描いている作品。