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サマセット・モーム「ジゴロとジゴレット」 [海外文学]

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  イギリスの作家、サマセット・モーム(1874~1965)の短編小説集。

1 「アンティーブの三人の太った女」
(1)仲の良い、ブリッジ好きの三人の太った女性たち。三人ともダイエットに必死。三人はひと夏を南仏の地中海沿いの町の別荘で過ごすことにした。

(2)そのうちの一人が、旦那を最近亡くした親戚の女性をそこに招いた。彼女はげっそりやせていて、医者からたくさん食べるように言われていた。彼女はダイエットに苦しむ三人の前で、バターやクリームのたっぷり入ったご馳走をおいしそうに食べた。

(3)三人は不満が募り、お互いに仲がとても悪くなり、口も利かくなくなった。

(4)しかし、2週間がたち、訪れた女性は別荘を去った。三人はダイエットを忘れ、レストランでここ数年、口にできたかったものを食べまくった。次第にお互いの心が一つになり、元の仲良しに戻って行った。
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2 「征服されざる者」
(1)第二次世界大戦でドイツ軍に占領された田舎町で、両親と暮らす娘が若いドイツ兵に犯された。ドイツ兵はその後、お詫びかたがた食料を運び込むようになる。

(2)そして、その娘が妊娠していることを知る。そのドイツ兵は娘を愛していると感じ、戦争が終わったら結婚して、ここで住み娘の両親の面倒を見たいという。

(3)両親は、そのドイツ兵を許し、二人の結婚を望むようになるが、娘は頑強に拒否する。娘が愛していた青年がドイツの捕虜収容所で亡くなったとの知らせが入る。しかし、娘はドイツ兵を許し、結婚する気にはとてもなれなかった。

(4)娘は自分の子供がドイツ人との間の子供であることに対する世間の目を想像すると耐え難かった。娘は無事、子供を出産したが・・・・

3 「キジバトのような声」
(1)オペラのプリマドンナを長く務め、オペラからは引退したが、コンサートツアーで世界を回る女性。数回の離婚を経験した後、普段は南仏のリビエラで、一人で生活していた。

(2)そこを訪れた作家は彼女から色々な自慢話を聞いた。例えば、彼女は付き合っていたお金持ちの男性からニューヨークで5万ドルの素敵な真珠のネックレスを買ってもらった。しかし、ニューヨークからヨーロッパへ帰る途中の船の中で二人は口論になった。彼は彼女の頬をひっぱたいた。彼女は首からそのネックレスを引きちぎり、海のなかへ放り込んだ。彼は真っ青になった。

(3)その後、二人は仲直りをし、彼はまたパリの宝石店で同じような真珠のネックレスを買ってくれた。放り込んだのはイミテーションで、本物はニューヨークの貸金庫にしまってあることも知らずに。

4 「マウントドラーゴ卿」
(1)外務大臣のマウントドラーゴ卿は毎夜、グリフィスという野党議員が出てくる夢にひどく悩まされていた。彼は精神的な病の治療で評判の良いオードリン医師を訪ねた。

(2)マウントドラーゴ卿はオードリン医師に、かって議会で質問に立ったグリフィスに対して、徹底的に言い負かしたことがある、と打ち明けた。

(3)オードリン医師は言った「我々は皆、いくつもの自我からできているのです。あなたの場合、そのうちの一つが、あなたがグリフィスに与えた侮辱に憤り、頭の中でグリフィスという形をとってあの時の残酷な仕打ちを責めているのです。グリフィスのところに行って、ひどいことをしてすまなかった、できる限りのことをして、その償いをしようと思う、と言いなさい。」

(4)オードリン医師は悪夢から逃れる方法はそれしかないと思った。しかし、マウントドラーゴ卿はそのアドバイスを受け入れることはなかった。

(5)ある日、オードリン医師は新聞で、マウントドラーゴ卿だけではなく、グリフィスまでもが同じ日に亡くなっているのを知る・・・

スポーツ・イラストレイテッド誌の記事「大谷翔平」 [スポーツ]

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  アメリカのスポーツ週刊誌「スポーツ・イラストレイテッド」は最新号で、日本ハムの大谷翔平選手を採り上げている。
  同誌は定期購読が3百万部という、大変人気のある雑誌。

1 ベイブ・ルース以来となる両刀使い
(1)大谷が来年、メジャーリーガーになれば、ベイブ・ルース以来の両刀使いとなる。ベイブ・ルースは、投手として通算94勝、生涯打率3割4分2厘、本塁打数714本の記録を持つ大選手。

(2)投手としての大谷を見ると、昨年の1イニング当たりの三振奪取数は1.22個。これはメジャーのホセ・フェルナンデスの1.39個、マックス・シャーザーの1.25個、ジャスティン・バーランダーの1.12個といった一流投手の成績に肩を並べるもの。

(3)打者としての大谷を見ると、昨年の1打席当たりの本塁打数は0.068であり、デイビッド・オルティーズの0.071に次いで高い比率で、本塁打を打った。 
  (オルティーズの生涯通算本塁打数は541本)

2 日本での大谷選手
(1)時速164キロの速球が中心であるが、フォークボール、スライダー、チェンジアップ、カーブも投げる。

(2)大谷の2億7千万円という年俸は、メジャー選手に比べ見劣りするが、広告関係の収入がそれを補っている。

(3)大谷が球団に与える恩恵は、彼の年俸を上回る。球団は53,800席ある札幌ドームを時に満員にする。

(4)彼は気軽にほかの選手とおしゃべりする。彼は外人に附いて英会話の勉強をしている。彼は酒を飲まないので、選手同士の飲み会には参加しない。

(5)球団関係者に言わせると、大谷は殆どお金を使っていない、球団の冴えない寮に泊まり、彼の収入のなかから両親が彼に送金している月1000ドル(11万円)のお金で生活している。彼は球場へは球団が手配するタクシーで行く。

3 メジャーリーグへの移籍
(1)日本でプレーするのは今年が最後の年になるであろう。

(2)大谷が日本ハムファイターズに入る時に、もし大谷がメジャーへの挑戦を希望した場合は、球団はそれを妨害するようなことをしない、という約束をしたようだ。

(3)あるアメリカの野球評論家は、打者としてよりも投手としての可能性の方が大きく、メッツのエースであるノア・シンダーガード(昨年14勝9敗、自責点2.60)に匹敵するとしている。

(4)大谷は、現時点ではどの球団にということは考えていない、と言っている。アメリカンリーグではピッチャーは打席に立たないので、DHで打者として試合に出ることができる。大谷に向いているともいえる。松井秀喜が大活躍したヤンキースは候補チームの一つである。イチローをとても暖かく迎えたマリナーズも考えられる。

4 メジャーリーグ移籍時の契約金額が制限された
(1)昨シーズン後に、25歳以下の海外選手のメジャーリーグ球団への入団については、アマチュア選手の扱いと同じとすると決められた。このため、大谷の場合も入団時の契約金上限は球団により違うが、475万ドル(5億2千万円)から1,000万ドル(11億円)程度にしかならない。更に悪いことには、フリーエージェントの資格を得る期間が6年となる。こうしたことから、昨シーズン限りでメジャーに移籍していた場合に比べると、今回のルール変更は彼にとり1億ドル(110億円)以上のマイナスとなるであろう。

(2)しかし、大谷は、私が現在求めているのは野球をするのに必要なお金を得て、野球を楽しむことだけ、と言っており、問題にしていない。

5 大谷の可能性
(1)これまでに、野茂英雄を筆頭に、100人以上の日本人選手がメジャーリーグに挑戦し、結果は様々であった。イチローのように殿堂入りが有力視される選手や、松井のようにワールドシリーズでMVPになるほどの選手もいた一方、ヤンキースにいた井川のように5年契約で2千万ドル(22億円)の契約であったが2勝しか挙げられなかった選手もいる。

(2)しかし、大谷はメジャーリーグで国際的なスターとしてセンセーションを巻き起こすかもしれない。

鈴木大拙「禅堂生活」 [宗教]

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  原書は鈴木大拙(1870~1866)が、1934年に英語で書いたもの。
  欧米人に禅の知識を知らしめることを目的とした。
  しかし、日本人にも役に立つということで、1935年に日本語訳が出た。
  2016年5月、岩波文庫の一冊として再度、出版された。

1 禅とは
(1)禅は、一つの修行であって哲学ではないのであるから、直ちに生活そのものを取り扱う。

(2)禅は空の心理を把捉するものであって、これを為すに知性や論理の媒介によらない。それは直感または直覚に訴える。

(3)空は、無・空虚・無内容を意味しない。それは絶対的意味を有し、相対的な言葉や形式的論理の言葉による表現を拒む。それを理解する唯一の方法は、自身これを経験するにある。

(4)師は、その弟子が十分に自分を満足させる答えのできるまでは否認し続ける。その否定の方法はは禅師それぞれの自由で、師は弟子たちを棒で打ったり、顔に一撃を加えたり、蹴倒したりした。弟子を嘲笑さえもした。

(5)要点は、外部から来るものを理解するのではなく、弟子たち自身の内にあるものに目覚めることである。

(6)公案は一種の問題である。これを修行者に与えて解かせる。これを解ければ、禅の真理の実証に導くということになる。

2 入衆(にっしゅ)
(1)禅僧は少なくとも数年間はこの道場で厳しい修行を経なければ禅僧としての資格がない。

(2)「入衆」とは、禅僧の志願者が初めてどこかの禅寺に属する専門道場の一員となること。

(3)志願者は道場の入り口で、入衆を乞うが、取次のものに「当僧堂は満員で何とか致し方がない」とか、必ず断られる。志願者は門外で座禅して数日を過ごす(庭詰)。そののち、屋内に入り3日間、旦過寮というところで終日、座禅に浸り、ようやく禅堂に入ることを許される。
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3 作務(さむ)(作業勤務)
(1)禅僧は、極めて抽象的な形而上学的問題の解決を迫られている。これを解くために瞑想に凝る。しかし、それが現実に彼の日常生活の諸経験に適応されないならば、その解決は単に観念的なものであり、何ら成果をもたらさない。それ故に、禅師たちは弟子たちが懸命に農園または森林や山中で働くことを熱望した。

(2)師も弟子も、禅堂生活に必要なあらゆる種類の勤労に等しく携わった。

4 経を読む
(1)その目的は・・・
   ① 開祖の思想に触れるため
   ② 精神的功徳を得るため

(2)経典を読誦すること自体が目的で、必ずしもその経典の内容を知的に理解することを伴わない。誦経そのものが功徳になる。誦経だけでなく、経文を書写することも功徳になる。

5 坐禅
(1)座禅の目的は、慧眼を開くことにある。そうは、公案によって、物の意味を見る眼を欠くという陰りを拭い去る。一つの公案をうまく透過すれば、他の公案が与えられる。
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(2)参禅とは、僧が師に謁して、公案に対する自分の見解を示すこと。通常は、一日二回行われる。

(3)僧は、その見解を最もよく表現する行動をとる。世間の礼儀作法にはとらわれず、老師に一撃を加えたり、蹴とばしたりする。老師の方では、偏見にとらわれた僧に棒打を加え、手酷く室外に追い出したりする。
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(4)坐禅をすることは、瞑想と同じではない。公案を解くために、心的精力をを集中するので、肉体もひどく緊迫の度を加える。筋肉は硬直し、神経は緊張する。

(5)公案に対して命がけの苦闘をする僧たちは、禅堂を忍び出て山中で夜を過ごしたり、岩の上に坐したりすることもある。

(6)禅堂では、書物は一切見ることは許されない。

ガーネット「狐になった奥様」 [海外文学]

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  著者はイギリスの作家、デイヴィッド・ガーネット(1892~1981)。
  本作品は彼の処女作で1922年に出版されたもの。
  若い妻が一緒に散歩しているときに、突然、狐に変身してしまうが、その後も狐になった妻を愛しぬこうとする、という奇抜な物語。

1 妻シルヴィア
   23歳。人並み優れた美貌で、感じのいい女性だった。
   この上なく冷静で、申し分なく上品だった。

2 変身
   夫婦は、丘の雑木林を散歩していた。
   二人は、いまだに恋人同士のように振舞っていた。
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   シルヴィアは、いきなり、夫のテブリック氏の手をとても激しく振りほどいてギャツと叫んだ。
   夫はすぐさま振り返った。
   ついさっきまで妻がいたところに、燃えるような赤毛の小さな狐がいた。

3 妻シルヴィアである雌狐との生活
   召使には暇を出し、テブリック氏と雌狐だけの生活が始まった。
   妻のからだにブラシをかけ、湿ったスポンジで拭いてやった。
   一緒に朝食を食べた。夫と並んで食卓につき、ソーサーに入れた紅茶を飲み。夫の指から料理を食べた。
   テブリック氏は妻に向かって言う「君が狐であっても、ほかのどの女性よりも君と一緒に暮らしたいんだ。」

4 次第に獣の性格をおび始める妻
   妻にチキンの手羽を与えると、妻はテーブルの上にあがって、骨までバリバリ噛んでいた。
   ウサギをかごに入れ置いておいたところ、妻はウサギをあらかた食い散らかし、残った皮と脚の切れはしを引き裂きながら、唸り声をあげていた。

   家を出て、自然の環境に行きたがる妻に対してテブリック氏は言う「君は自由を求めている。君をいつまでもとどめておくことは出来ない。」
   テブリック氏が木戸を開けると、妻は矢のようにそこを通り抜け、ひと吹きの煙のように牧草地を突き切って、一瞬のうちに姿を消してしまった。

5 妻を求めて
   テブリック氏に絶えずつきまとっていたのは、やさしく上品な女性の思い出ではなく、一匹の動物の記憶だった。現在のテブリック氏の望みは、ただひとつ、そのけだものを取り戻すことだけだった。妻の狐としてのしぐさの一つ一つが、いまやテブリック氏には無性に慕わしくなっていた。

6 妻と5匹の子狐
   ようやく妻が住む穴を見つけたが、そこには5匹の子狐がいた。
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   その時、本当に初めて、妻の身の上に何が起こったのか、二人はいまやどれほど隔たってしまったか、をはっきりと理解したのだった。
   けれども、次々に子狐たちに目を移したり、ひざの上に寝そべらせたりするうちに、テブリック氏は、自分のことを忘れ、ひたすらその可愛らしい情景をながめて、喜びを覚えた。

   テブリック氏はたびたび、妻と子狐たちに会った。
   テブリック氏は、一人きりになったとき、自分の孤独な生活をしみじみと有難いと思った。かれは、幸福の何たるかがやっとわかった。自分はいまや無上の幸福を見出したのだ。将来のことを思い煩わず、その日その日を過ごし、朝毎に、自分が心から愛している、やんちゃな、情けの深い子狐たちに取り巻かれて、かたわらには子狐たちの母親がいるのだ。彼女の単純な幸福こそ、自分の幸福の源泉なのだ。

   しかし、幸せは長くは続かなかった・・・・



   

「超高齢者医療の現場から」 [医療]

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  中公新書の一冊。2011年刊。
  著者は医師の後藤文夫さん。
  現場に携わる立場から高齢者医療の問題を探る。

1 要介護高齢者の急増に対処できない
(1)ケアマネージャの機能低下
  ア 本来は介護施設と高齢者の間に立って中心的役割を果たすことが期待されているが、ケアプラン作成等の報酬が低すぎて独立できず、介護事業者と連携して活動していることが多いため、高齢者よりも介護事業者側に立った行動になってしまう。

  イ 加えて、厚生労働省と自治体は介護サービスを抑制して介護保険費用の節減を図るため、ケアマネージャの活動に種々の制限を加えている。

(2)専門的介護が必要な高齢者ほど介護施設に入所しにくい
  ア 特別養護老人ホームでは、気管切開チューブの吸引、胃ろうの造設による経管栄養、褥瘡の処置などが日常的に行われている。しかし、夜間は看護師不在になることから、気管吸引のように生死にかかわる処置の実施には不安があり、そういった医療的処置が必要な高齢者が入所を断られるケースが増えている。
  
  イ 医療的処置ができる、ショートステイのための介護施設も少ない。

(3)年金受給額だけでは施設への入居費用を賄えない
  ア 相部屋タイプの特別養護老人ホームであっても、年金受給額だけでは賄えず、国の補助に加え、家族の支援が必要になっている。

  イ 家族の支援が得られない場合は、生活保護の受給を求めることになるが、自治体は生活保護受給世帯の急増に悲鳴をあげることになる。

(4)入所希望高齢者の待機を減らせるか
    所得の制約から、低廉な費用で入所可能な施設では、待機者が定員を上回るということも多い。保育園への待機児童の解消だけではなく、入所希望高齢者の待機解消も社会福祉の重要な課題である。

(5)有料老人ホームを巡るトラブル
  ア 民間事業者が開設する有料老人ホームでは、入居時に数千万円の一時金の支払いを求められるところも多いが、入居してみると、サービスの質や居住環境が気に入らず、短期間で中途解約することが少なくない。しかし、その場合、一時金を戻してもらえないというトラブルが続出している。

  イ また、特殊な介護や治療が必要になった場合には退去を迫られることがあり、トラブルとなる。

2 超高齢者(85歳以上)に多い病気
(1)脳血管障害
(2)誤嚥性肺炎
(3)食事中の窒息
(4)尿路感染症と排尿障害
(5)骨粗鬆症と骨折
(6)褥瘡と閉塞性動脈硬化症
(6)帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛
(7)認知症とうつ病

3 尊厳死と安楽死
(1)尊厳死
   ア 延命治療を拒否し、自然死を選ぶ。
     ・不治の状態で死が迫っている場合、ただ単に死期を引き延ばすための延命措置をしない。
     ・苦痛を和らげるための緩和医療は行う。
     ・持続的植物状態に陥った時は、生命維持措置を行わない。

   イ 重度の認知症の人の尊厳死については反対意見が多い。
     ・死に直面していない。
     ・重度の認知症を尊厳死の対象とすることは、それ以外の知的・身体的・精神的な障害をもその対象に加えかねない危険性をはらむ。

(2)安楽死
    毒薬や麻薬、睡眠薬などによって死を早める行為。
    安楽死の条件
     ① 耐え難い肉体的苦痛
     ② 死期が迫っている
     ③ 肉体的苦痛の緩和、除去の手を尽くした
     ④ 患者の明示の意思表示がある

   *消極的安楽死
     自分で食べられなくなった人への食事介助、経管栄養、点滴などの中止により、死をもたらす行為。

テスラモーターズ [インターネット情報]

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<モデル3>

 アメリカのカリフォルニア州にある電気自動車を専門に製造販売する会社。

1 創業して14年。株式時価総額は515億ドル(5兆6,600億円)に達しており、ゼネラルモーターズを上回る。

2 投資家は以下のようなことには目をつぶり、経営者のイーロン・マスクが「いつの日か電気自動車が市場を支配する」という言葉を信じている。
  
 ① 同社は2016年に78,230台しか車を売っていない。1千万台を売る、トヨタ、フォルクスワーゲン、ゼネラルモーターズなどの1%にも満たない。

 ② 同社は赤字続きの会社である。
    売上   2015年 40.4億ドル(4,400億円)
         2016年 70.0億ドル(7,700億円)

    最終損益 2015年 8.8億ドル(968億円)の赤字
         2016年 7.7億ドル(847億円)の赤字

3 同社の新しい「モデル3」は、同社にとって初めての大量生産製品である。前の二つのモデルと同じようにセダンタイプで、最低価格は3万5千ドル(385万円)となる。同社は現在、生産力の強化に努めており、2018年には年間50万台、2020年には年間100万台を生産することを目標にしている。これまで生産拡大のネックになっていたリチウムイオン電池については自社工場を保有するようになり、このため生産拡大が可能になった。

4 昨年、同社は、屋根に太陽光発電パネルを取り付ける、ソーラーシティ社を20億ドル(2,200億円)で買収した。クリーンエネルギーを指向する電気自動車の購入者に太陽光発電パネルの販売が可能と考えている。しかし、投資家のなかには、今回の買収の効果を疑問視する見方もあり、同社の株価は一時的に値を下げた。

5 同社の将来的なリスクは・・・
  ① 大手メーカーが本格的に電気自動車の生産に取り組んだ時に優位性を維持できるか。

  ② リチウムイオン電池の価格が、将来、中国の大量生産などにより下落した場合、自社工場が重荷にならないか。

  ③ カリフォルニア州の環境規制に基づく排出権取引が同社の重要な収入源となっているが(年間2億ドル(220億円))、他の自動車メーカーの環境規制対応車の販売が増えてくるとこの収入がな減少する。

  * 「TIME」誌最新号を参考にした。

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シェイクスピア「ヴェニスの商人」 [海外文学]

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 ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616)の1596年、32歳の時の作品。
 イタリアのヴェニスの貿易商アントニオを主人公とする戯曲。

1 アントニオが、ユダヤ人の高利貸シャイロックから金を借りる。
  ・アントニオは親友バサーニオから、美貌と財力を兼ね備えた女性ポーシャに求婚するため資金を貸してくれるよう頼まれたが、あいにくすべてのお金を3隻の貿易船につぎ込み、手許にお金がない。
  ・アントニオは仕方なく、シャイロックからお金を借りることにする。

  ・シャイロックは、過去にアントニオから悪しざまに言わたことをうらんでいた。

  ・このため、借り入れの証文には、期限までに返済がない場合は、アントニオの体の肉、1ポンドを切り取ることができる、という条項を入れた。

  ・アントニオは証文に判を押して、お金を借り、それをバサーニオに渡した。

2 バサーニオはポーシャのところに行き、求婚する。
  ・ポーシャは父親の遺言で、金、白金、鉛の三つの箱から、ポーシャの絵姿の入った箱を選ぶことができた男性とのみ結婚することができる。すでに、モロッコ王とアラゴン大王は失敗している。

  ・バサーニオは、鉛の箱を選び、ポーシャの絵姿をその中に見出し、二人は結ばれる。

3 アントニオが期限までにお金を返せなかった。
  ・アントニオが全財産をつぎ込んだ3隻の貿易船はいずれも難破して沈んだとの知らせが届き、彼は期限までにシャイロックに借りたお金を返すことができなかった。

  ・シャイロックは証文にあるとおり、アントニオの体から肉1ポンドを切り取り、アントニオを死に至らしめようと、その許可を得るため審判を求めた。

  ・審判を主催したヴェニスの大公はシャイロックに対して慈悲を求めたが、シャイロックは聞く耳を持たなかった。借りたお金の3倍を返すという提示も拒否した。

4 ポーシャが若い法律の博士に扮装して審判で証言。
  ・ポーシャが扮したその博士は「ヴェニスの法の条文よりしても、趣旨よりしても、この証文に明記されたる抵当の取り立ては。その正当性において、いささかも欠けるところは見当たらぬ」と言い、シャイロックはそれを聞き、喜んだ。アントニオは死を覚悟した。

  ・しかし、その後で、博士はシャイロックに以下を付け加えた。
   「肉1ポンドを切り取ることは認める。しかし、血は一滴も与えることは認めていない。もし、血を1滴でも流した時は、お前は死刑、財産はすべて没収する」
   「ヴェニスの法律では、異邦人がヴェニス市民の生命を奪わんと企てた場合は、犯人たる異邦人の財産は、その半分を被害者に、残りの半分は国庫に没収することになっている」

  ・アントニオは助かり、シャイロックは財産を失う。

  *メインテーマはアントニオとバサーニオの友情、ならにびにポーシャとバサーニオの愛。
   しかし、高利貸しのユダヤ人が極悪非道の人間として描かれているのは、やや認めがたい。
   最後は、ポーシャの機転により、アントニオは救われ、シャイロックは懲らしめられるという勧善懲悪の話。

ヨーロッパ諸国の植民地経営 [世界史]

IMG_20170419_0001.jpg  
  「グローバル経済の誕生」の第5章「暴力の経済学」を参考にした。
  同書は、シカゴ大学教授のケネス・ポメランツさんとカリフォルニア大学教授のスティーヴン・トピックさんの共著。原著は2006年に出版された。
  世界各地の結びつきが強まる、いわゆるグロ-バル化の負の側面を描いている。

1 アフリカで奴隷貿易が発展した理由
(1)1800年より前では、アメリカに来た移民の4人のうち3人が、アフリカ大陸から大西洋を越えて強制的に連れてこられた人々である。その数は1000万
~1500万人といわれている。

(2)アメリカ大陸では、植民地経営を行うための労働力が不足していた。暴力や天然痘、麻疹といった伝染病により、スペイン人が新大陸を征服してから数十年以内に先住民の約9割が死んだ。

(3)新大陸での植民地経営のためにアフリカ奴隷が買われ、その対価として銀、砂糖、タバコなどが支払われた。アフリカ人奴隷は、アフリカ人の貿易商の手によって捕らえられ、新大陸に運ばれるために売られていった。それはアフリカで植民地を経営するよりもずっと簡単で安定した、儲けの多い商売であった。

2 ペルーのポトシ銀山
(1)スペイン人が1545年に銀鉱脈に気づき、採掘を始めた。1565年からは、鉱石のなかから水銀を用いて銀を採取する方法を採用して、産出量を増やした。

(2)砕石作業に必要は水を確保するため、水路、ダム、貯水池などが建設された。

(3)また、労働力を確保するため。先住民の村々から強制的に人を拠出させ、鉱山労働に従事させた。鉱夫たちの労働は、地中深くの蒸し暑さ、鉱石を背負っての搬出など、過酷なものであった。

(4)鉱夫の数は1650年ごろには4万人に達し、ポトシの町の人口は16万人に膨れ上がった。しかし、1800年頃には鉱脈は枯渇し、閉山に追い込まれ、町はゴーストタウンと化した。

3 イギリス、オランダとスペイン、ポルトガルとの覇権争い
(1)対立するスペインの海軍力にダメージを与え、植民地を拡大して異教徒を改宗させるという名目で、イギリスの貴族や地主は、海賊船にお金を投じた。海賊事業は儲かる仕事で、実際には、高い利益率に惹かれてお金が投じられた。

(2)香辛料、金銀、奴隷、砂糖といった贅沢品を載せたスペインやポルトガルの船が襲撃された。

(3)また、オランダは武力を使って、ポルトガルが独占していたブラジルでの砂糖プランテーション経営や西アフリカ沿岸部での奴隷貿易を攻略した。

(4)その後、オランダ人は厳格なプロテスタント教徒であったにもかかわらず、アフリカの沿岸部で次々と奴隷貿易の輸出港を建設し、人間を家畜のようにカリブ海に浮かぶフランスやイギリスの植民地に輸送し始めた。

4 奴隷解放後の植民地農園における強制労働と年季奉公
(1)19世紀中頃、世界各国で奴隷制が廃止された。奴隷制の下では、奴隷たちは過酷な労働に従事させられていたが、奴隷解放後も植民地の統治者たちは、労働者を酷使するするため、色々な方法を考え出した。

(2)農園主は解放後の奴隷たちに「見習い労働」という名目で労働を強制した。

(3)さらには、アフリカ人の強制労働だけでは十分でないことが明らかになってくると、熱帯気候に属する植民地では、年季契約労働制度を導入するようになった。これらの植民地へは、インドや中国から200万人以上もの年季契約労働者が連れてこられた。

(4)しかし、イギリス植民地のカリブ海諸国では、インド人の年季契約労働者は、アフリカ人奴隷に強制してきた労働量のかろうじて半分ぐらいの仕事しかできなかった。奴隷労働が過酷で、極限まで人々を搾取するものであったことが分かる。

5 ベルギーによるコンゴ支配
(1)ベルギーのレオポルド二世(在位1865~1909)は奴隷解放とアフリカ人保護を名目に、コンゴを手に入れた。

(2)その後、原住民の大量虐殺と象牙の採取が始まった。その結果、500万から800万のアフリカ人と、数十万頭の象が失われた。

相模原障害者殺傷事件 [現代社会]

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   2,016年7月26日に相模原市の障害者施設で、犯人の植松聖により入所者19名が刺殺され、26人が負傷した事件。
   この事件に関連する問題を考えてみると・・・

1 相模原の事件の問題点
(1)犯人の「自律的な生活ができない重度障害者は周りに迷惑をかけるばかりであり、抹殺されるべき」という犯人の考え方がまず問題となる。

(3)また、この犯行を未然に防止できなかったかという問題。
    ・犯人に精神病治療の経歴があったこととの関係
    ・いったん措置入院させたが、その後、退院させた。
    ・犯行予告に対する警察の対応。
    ・障害者施設の防犯体制

2 どのように対応すべきであったか。
(1)精神病治療により対応できたか。
    本件の犯人のように、他者を傷つける意識を強く持っている人間を精神病治療により対応できるのだろうか。本当に実行に移す気があるのか見極めるのは困難、また、薬剤投与により考えを変えさせるのは難しいであろうし、薬を飲み続ける保証もない。

(2)犯行予告に対する対応
    本件の場合、かなり明確な犯行意志の表明があった。しかし、対象者、対象施設が明確でない場合、それだけで犯行予告した人間を処罰したり、拘束したりすることは難しい。施設による警備員の配置や、警察によるパトロールの強化が必要であった。
   
2 本事件に関連する諸問題
(1)重度障害者を社会全体でサポートするという意識が不十分
    ア 自立が不可能な重度障碍者や認知症の高齢者は、家族が過度の負担を背負いこむことのないよう社会全体でカバーする、すなわち国がサポートする体制が望ましい。

    イ しかし、日本の財政状態の深刻化や、少子高齢化の進展により、国がこういったことにお金を今以上に回すことが容易にできるとは思われない。

(2)障害者を隔離して、家庭や社会から分離するという意識が日本では強すぎるのではないか。
      人口1万人当たりの精神科病床の日本の28床に対し、米国は3床。
      平均入院日数は、日本は330日にたいし、アメリカは9日。
      日本では、欧米と違い、病院の中に閉じ込めることにより対処しようとしている。
      ハンセン病患者を隔離し続けるのと同じ発想。

(3)このような意識が強いため、この問題に関する議論の深まりがみられない。例えば、以下のような点はもっと議論されるべきと思われる。
    ・出生前診断などによる生まれる前の選別が行われるべきか。
    ・安楽死の問題。
       本人の希望に沿って延命のための過剰な治療をしないということ、あるいは、延命のためにつけられた装置を本人の希望によりはずすこと。

3 本事件について
(1)本事件のように、第三者が本人の意思を無視して、自分の考えで障害者の命を絶つことを許されることではない。

(2)本事件の犯人は、障害者が殺されるべき理由をもっともらしく上げ連ねていおり、それはナチスの障害者抹殺の理由に類似しているとも言える。

(3)しかし、犯人は結局は、不満のはけ口として無差別殺人へ傾斜していたのではないかとも思われ、障害者に関する主張は単なる口実ではなかったのか。

  * 参考にしたのは・・・
    「相模原障害者殺傷事件」 2016年12月 青土社刊
     著者は、立命館大学教授の立石真也さんと、障碍者ヘルパーで文筆家の杉田俊介さん。
          

「ヘンリ・ライクロフトの私記」 [海外文学]

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  著者はイギリスの小説家、ジョージ・ギッシング(1857~1903)。
  彼は、私生活では不幸な結婚を繰り返し、また、発表した作品も
 今一つ人気が出ず、経済的にも恵まれなかった。
  本作品は、1903年に単行本として刊行された。
  著者はその数か月後に、評価を得ないまま亡くなってしまうが、
 本作品はその後、イギリス文学の傑作のひとつと評されるようになった。

  本書の主人公は、晩年に至り、思いがけず遺産を受け取り、
 郊外の一軒家で一人、静かで落ち着いた生活をするという、
 著者が夢に描いているような設定。

  その主人公の生活や、思索の内容を、記述している。

1 家庭内の不和
(1)同じ屋根の下で怒りの言葉一つ聞こえず、その同居人の間に不快なわだかまりが露ほどもない、といえる家庭が、果たしてどのくらいあるであろうか。人間が一緒に住むということは、そんなに難しいことなのだ。

(2)人間というものは元来仲間と平和な交わりを営むようにはできていない。人間は生まれつき我が強く、多くの場合、ケンカ腰で、自分になじみの薄い性質のものならばいかなるものに対してもいつも多少とも敵がい心に燃えて白眼視するものである。

2 国と国との争い
(1)個人どうしも仲良くやってゆけないとすれば、互いに国土を異にした国民の間に、相互の理解と善意が生まれる可能性ははるかに少ない。本当に互いに好きになるという意味で、二つの国民が友好的になることは絶対にない。しかも、あらゆる国には、国際間の不和を悪化させるのを喜びとし、仕事としている人間が多い。

(2)昔は、距離が遠く交通が少なかったために、多くの国々の間には平和が確保されていた。しかし、接近することによって、すべての国が自然に争闘の起こりうる圏内に入った。

3 イギリス料理
(1)我々の食卓は、生肉を丸呑みする肉食動物ならいざしらず、普通の人間ならとうてい口にするに忍びないていのものだといわれている。パンもヨーロッパ中で最も下等なパンで、消化に悪いこね粉にすぎないそうだ。
   
(2)しかし、イギリスの食物は質において世界最上のものであると思う。イギリスの料理法は、気候温和な風土のものとしてはいかなる地方のものにも勝って健康的で美味なのだ。イギリス流の料理法の目的とするところは、人間の滋養のもとであるなまの材料を調理して、健康な口に合うように、その生地のままの風味を引き出すことにある。

4 歴史を読む
(1)不正ーーこれこそ世界の歴史を呪われたものにしている忌まわしい罪悪なのだ。主人の気まぐれのために拷問を受けて死んでゆく奴隷、こういう残忍なことがざらにあってたまるものかと人は感ずるかもしれない。けれども、それはあらゆる段階で何万べんとなく繰り返し行われてきた、そしてまた耐え忍ばれてきた事柄の端的な表現に過ぎない。

(2)かような悪逆無道な事態はもうこれ以上起こりうるはずがない、人類はかかる恐ろしい可能性から脱却したのだ、と考えて自らを慰める者がもしあるとしたら、その人は書物には通じていても人間性には通じていない人だ。

5 金は時間だ
   我々が生涯を通じてやっていることは、要するに時間を買う、もしくは買おうとする努力に他ならない。ただ、我々の大多数は、片手で時間をつかみながら、もう一方の手でそれを投げ捨てている。

6 死を間近に迎えた時に
   私は自分の生涯を、着実に完成された長い一編の作品ーー一編の伝記、欠点が多いかもしれぬが、自分の最善を尽くした伝記、と願わくは眺めることが出来たらと思う。そして、私が「終わり」という最後の言葉を吐くとき、やがて来るべき安息を、ただ心中満足の念のみをもって喜び迎えることが出来たらと思う。