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「貧困と闘う知」 [現代社会]

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  2017年2月、みすず書房刊。
  著者は、米MIT経済学部助教のエステル・デュフロさん。

  途上国の貧困問題を、教育、医療、金融、ガバナンスの点から分析する。

1 教育
(1)女子教育は、乳幼児と妊産婦の死亡率を引き下げ、彼女たちが将来産む子供たちの教育水準を、男の子についても女の子についても高める。

(2)教育を受けた者は、自分自身がもっと生産的になるというだけでなく、新しいアイデアの採用を促進したり、現存する資源のより良い利用を擁護したりすることによって、周りの人たちをさらに有能にしていく。

(3)子供たちを学校に入学させるだけではなく、欠席率を低下させることが重要だ。インドでは欠席率が都市部で15~25%、農村部では50%前後にまで達する。

(4)欠席率を低下させるためには、従来からの無償の制服や奨学金の支給に加え、親への教育の利益に関する情報の提供や、寄生虫の根絶のための投薬が、少ない費用で大きな効果を期待できる。
  (寄生虫の感染により体力を奪われ、学校に通えない子が多い)

(5)教育を与える側の問題もある。教員のモチベーションを高める努力も重要である。
   ① ケニアでは英語の教科書が与えられるが、英語を理解できる子供は少なく、また、親はほとんど英語を話さない。

   ② 教員の意識が低い。インドでは、不意打ち調査の際に教壇に立っていた教員は半分以下だった。

2 健康
(1)インドの農村部での調査によると、村人の健康状態は良くなかった。33%で発熱の、23%で腹痛の症状があった。また、約90%で栄養不良、50%強で貧血であった。

(2)そうした地区の医療機関に従事してる医師の44%は医療資格を有しておらず、そのうち14%は医療にかかわる訓練を受けたことがなかった。彼らは、診察を受ける患者の68%に抗生剤の注射を、12%に点滴を行う。このような過剰な治療の方が人気があり、適正な治療を行う保健センターの方は人気がない。

(3)予防ケアの面では、幼児に対するワクチン接種率の低さ、エイズ検査に対する消極的な姿勢が問題となる。ワクチン接種は、効果に対する理解不足あるいは副作用の恐れが影響し、エイズ検査については、陽性となることを恐れる。

3 金融
(1)小規模事業者に対する少額の融資である、マイクロクレジットが貧困に対する有効なツールとなっている。貧しい人々に施しを与えるのではなく、起業家精神を刺激して、自律的に貧困から抜け出すことを促す。

(2)マイクロクレジットを発展させたインドのグラミン銀行は、自己の収支をプラスにして制度を自立させ、かつ顧客が貧困から抜け出す手伝いをすることに成功した。

(3)しかし、金利の高さ、顧客が抱え込む累積債務、全く改善しない日常生活などを批判する声もある。

(4)マイクロクレジットの標準的なモデルは以下の通り。
  ① 貸付の対象は女性だけ。
  ② 顧客は1年にわたって週ごとに、元本の一部を返済し、金利を支払う。
  ③ 顧客は5~10人のグループを作り、返済は連帯責任となる。
  ④ グループのメンバーは返済日ごとに集まる。
  ⑤ 金利は少なくとも20%、最高で100%。

4 ガヴァナンス
(1)汚職の事例としては・・
  ① インドでは警察官が訴えを受け付ける際に金品を要求する。このため、3分の2以上の事例で、犯罪の被害者は警察に届け出ることさえしなかった。訴えを届け出た場合でも、その3分の1は届け出が記録されていなかった。警察官は未解決事件の数によって評価されるので、新しい犯罪を記録することを望まなかった。

  ② インドネシアでは道路に検問所を設置して、警察官が運転手にわいろを要求する。

  ③ インドネシアのある調査では、道路建設のために支出された費用の4分の1が横領されていた。資材の4分の1弱が盗まれ、支払ったことになっている労賃の27%が実際には支払われていなかった。

(2)汚職と闘う方法は・・
  ① 「上から」の監督
       会計監査、行政による監督
  ① 「下から」の監督
       利用者による監視

(3)ブラジルでは、60の自治体が毎月ランダムに選ばれ、監査を受ける。監査の結果はマスメディアに伝達され、インターネットで拡散され、地元のメディアでコメントされる。これらの情報は選挙結果に実際に影響を与える。